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神社の由緒書きを読むと、「御祭神」「主祭神」「相殿神」「御神体」と、よく似た言葉が並んでいることがあります。どれも神さまのことを言っているようで、どこが違うのかは書かれていません。
地元の小さな神社となると、御祭神そのものが分からないこともあります。Yahoo!知恵袋には「神社の御祭神が、わからない場合の調べ方を教えてください」という質問があり、質問した人は「神社庁、県立図書館では登録がありませんでした」と書いていました(2020年9月の、一人の方の投稿です)。
この記事では、辞典と神社本庁・神社庁の言葉で「御祭神」とその周りの言葉を分け、自分の行く神社の御祭神を調べる方法を、手軽なものから順に並べます。調べても分からなかったときにどう考えればよいかも、資料をもとに書きました。
- 御祭神はその神社にお祀りされている神すべてのことで、主祭神はその中で中心になる神、御神体は神霊が宿るとされる物であること(辞典・岡山県神社庁)
- 神社によって御祭神が違うのは、土地の神、人、各地に分けて祀られた神と、祀られ始めた事情が違うからで、御祭神は後から加わることもあること
- 御祭神は、由緒書き、都道府県の神社庁、神社のデータベース、図書館の神社名鑑の順に調べられ、神社庁の神社検索でも「不詳」と出る神社があること
御祭神とは神社にお祀りされている神のこと
先に答えを書くと、御祭神(ごさいじん)は、その神社にお祀りされている神のことです。辞典の「祭神(さいじん)」の項目を引くと、デジタル大辞泉は「神社に祭ってある神」、精選版日本国語大辞典は「神社にまつってある神。祭祀(さいし)の対象である神」と説明しています。「御祭神」は、この祭神に「御(ご)」を付けて敬った言い方です。

言葉そのものは古く、精選版日本国語大辞典は「祭神」の最初の用例として、平安時代の927年(延長5年)にまとめられた『延喜式(えんぎしき)』の「御巫祭神八座」を挙げています。
神社本庁の公式サイトは、各地の神社にお祀りされている神さまは、地域の人々から「地域の守り神」として敬われてきたと書いています。その土地の名前を取って「○○さま」、親しみを込めて「○○さん」と呼ぶことも多いでしょう、とも添えています。
御祭神と主祭神は同じ意味ではない
「御祭神」と「主祭神」は、混ぜて使われることがありますが、指している範囲が違います。祭神はお祀りされている神すべて、主祭神はその中で中心になる神です。
日本大百科全書(ニッポニカ)は、神社には一般に複数の神々が祭神として祭られ、その場合、もっとも中心になる神を主神または主祭神といい、ほかの神を相殿神(あいどのかみ)ともいう、と説明しています。岡山県神社庁の「神道用語辞典」も、祭神を「神社にお祀りされている神」とし、「神社に主として祀ってある神を主祭神という。相殿として配祀神を祀ってある場合もある」と書いています。
主祭神・配祀神・相殿神の違い
由緒書きでよく見る三つの言葉を、辞典の説明で並べます。
- 主祭神(しゅさいじん)
-
祭られている祭神の中で、中心となる神(デジタル大辞泉「主神」)。岡山県神社庁は「神社の主体としてまつる神」と説明しています。
- 配祀神(はいししん)
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主祭神にそえてまつる神(精選版日本国語大辞典「配祀」)。同辞典は、ふつう主祭神と縁故の深い神をまつると書いています。デジタル大辞泉は、配祀を「主祭神のほかに、同じ神社の中に他の神を祭ること」と説明しています。主祭神との関係を表す言葉です。
- 相殿神(あいどのしん・あいどのかみ)
-
相殿は、同じ社殿に2柱以上の神を合わせて祭ること、またその社殿のこと(デジタル大辞泉「相殿」)。日本大百科全書は、相殿を、同じ殿の中に2柱以上の神がお祀りされているときの呼び名とし、その殿と、そこにお祀りされる神のどちらも指すと説明しています。相殿神は、その殿に主祭神とあわせてお祀りされている神のことです。
覚え方の目安として私なりに分けると、配祀神は主祭神との関係から見た呼び方、相殿神は主祭神と同じ社殿にいるという場所から見た呼び方です。ただ、日本大百科全書は、神社の祭神は主祭神と配祀神(または従祀神)に分けられ、配祀神または従祀神を相殿神というと書いています。同じ神が、配祀神とも相殿神とも呼ばれることがあるわけです。由緒書きでどちらの言葉が使われていても、「主祭神のほかにお祀りされている神」と読んでおけば大きくは外れません。
主祭神とそのほかの神の区別は、平安時代の記録にも見えるようです。日本大百科全書は、『延喜式』の神名帳に「前」とあるのは、相殿神を指したものとみてよいとしています。
実際の神社の例も見てみます。兵庫県西宮市の廣田神社は、公式サイトで御祭神を「天照大御神之荒御魂(あまてらすおおみかみのあらみたま)」とし、その横に「御脇殿」として住吉大神・八幡大神・諏訪建御名方大神・高皇産霊大神の四柱を挙げています。由緒記では、御脇殿の四社は「御主神に尤も縁由深き神々」で、古くは合わせて「廣田五社」と呼んだと説明しています。神社によっては、「主祭神」「配祀神」ではなく、このように独自の言葉で書き分けていることもあります。
摂社・末社の神との関係
境内には、本殿のほかに小さなお社が並んでいることがあります。摂社(せっしゃ)について、デジタル大辞泉は「本社に付属し、その祭神と縁故の深い神を祭った神社」と説明しています。本殿の主祭神・配祀神とは別に、摂社や末社にもそれぞれお祀りされている神がいるということです。境内のどこに摂社や末社があるかの見分け方は、『神社の境内図の読み方』で書いています。
御祭神と御神体は別のもの
もう一つ混ざりやすいのが「御神体」です。デジタル大辞泉の説明を読むと、御祭神は神そのもの、御神体は神霊が宿るとされる物として、二つは別々の項目で説明されています。
デジタル大辞泉は、神体を「神霊が宿っているものとして神社などに祭り、礼拝の対象とする神聖な物体」と説明しています。古代では山・大きな岩・大木などが神体や神の座と考えられ、今日では鏡・剣・玉・鉾(ほこ)・御幣(ごへい)・影像などが用いられることが多い、とも書いています。「御神体」は、この神体を敬っていう言葉です(デジタル大辞泉)。

岡山県神社庁の「神道用語辞典」は、神体を「もともとは神の本体そのものを指したが、今日では礼拝の対象となる神霊のやどるもの」と説明し、山そのものを神体として信仰するものを「神体山」と呼んでいます。御神体を安置する場所は、ふつう本殿の奥にある内陣(ないじん)です(同辞典)。
ただ、どこの神社でも御神体が本殿の中に納められているわけではありません。奈良県桜井市の大神神社(おおみわじんじゃ)は、御祭神を大物主大神(おおものぬしのおおかみ)としたうえで、公式サイトの拝殿の案内に「当神社は三輪山をご神体とするために本殿がなく、拝殿を通して三輪山を拝む原初の神まつりの姿を留める」と書いています。拝殿の奥には三ツ鳥居(みつとりい)があり、本殿を建てずに、鳥居を通して山そのものを拝む形を古くから伝えている神社です。
先ほどのデジタル大辞泉の説明でも、古代には山や大きな岩、大木が神体や神の座と考えられ、鏡や剣などが多く用いられるのは今日のこととして書かれていました。世界大百科事典の説明では、昔の人は、目を引く玉石や岩、樹木、山などに神霊が宿ったり降りてきたりすると見て、それを神体としてお祀りしていました。のちに鏡や玉、剣のような宝物も神体とされ、神社の建物がつくられていくにつれて、社殿の奥深くに収められるようになったそうです。「御神体は本殿の奥に納められた物」という見方は、そうした形が広まってからのもので、大神神社は、本殿を設けずに三輪山を拝む形を「原初の神祀りの様」と公式サイトで説明していて、それより古い形を伝えている、と見ることもできそうです。公式サイトの「大神神社について」と「拝殿」の二つのページを合わせて読むと、御祭神は大物主大神、御神体はその神が鎮まる三輪山です。
神と、神を表す物を分けていることがよく分かる例が、愛媛県の石鎚神社です。公式サイトには、「御祭神は、石鎚毘古命御一神ですが、次の三つの御神徳を表すため、三体の御神像をお祀りしています」とあります。お祀りしている神は石鎚毘古命(いしづちひこのみこと)一柱で、三体の像はその神の三つの御神徳を表すもの、という書き方です。像が三体あっても、御祭神が三柱になるわけではありません。
神社によって御祭神が違うのは、祀られ始めた事情が違うから
同じ「神社」でも、お祀りしている神は神社ごとに違います。辞典の説明を手がかりにすると、その理由は神がどういう事情で祀られ始めたかが、神社ごとに違うからだと考えられます。ここでは、土地の神、人が神として祀られたもの、ほかの神社から分けて迎えた神の三つに、私なりに分けて順に見ていきます。人が神として祀られたあとに、ほかの土地へ分けて迎えられた神のように、二つの分け方にまたがる神もいます。
古い神社の神の多くは土地の神だった
平安時代の『延喜式』の巻9と巻10は「神名帳(じんみょうちょう)」と呼ばれ、朝廷からお供えを受ける神社として、3132座の祭神、2861の神社を国や郡ごとに載せています(デジタル大辞泉)。百科事典マイペディアは、古事記や日本書紀の神代の巻に名前の出てくる神を除けば、この3132座の神のほとんどは地神(じがみ、その土地の神)だったと書いています。
日本大百科全書も、ある地域を支配するとされる神で、とくに神名のない神が神社の祭神になっていることがある、と書いています。古事記や日本書紀に出てくる神の名前が、どの神社にも最初からついていたわけではありません。
人が神としてお祀りされることもある
百科事典マイペディアによると、古代には現実の人間や天皇を祭神とする例はまれでした。鎌倉時代以降、血縁や地縁に固有の祖先や功労者などが人格神としてまつられるようになり、明治時代にも現実の人間を祭神とする崇敬社が多くつくられたそうです。
よく知られているのが菅原道真で、世界大百科事典の「人神(ひとがみ)」の項目は、道真の霊がのちに天神としてまつられた例を挙げています。天満宮の成り立ちは『天神信仰の系譜』でくわしく書いています。
同じ神が各地に分けてお祀りされる
全国に同じ名前の神社がたくさんあるのは、分霊(ぶんれい)や勧請(かんじょう)という仕組みがあるからです。デジタル大辞泉は、分霊を「ある神社の祭神の霊を他に分かち祭ること」、勧請を「神仏の分身・分霊を他の地に移して祭ること」と説明しています。
世界大百科事典は、九州の宇佐八幡から迎えた京都の石清水八幡、石清水八幡から迎えた鎌倉の鶴岡八幡を勧請の例に挙げ、全国の八幡神社は、宇佐・石清水・鶴岡のいずれかの八幡宮から勧請したものが多い、と書いています。
神社本庁は「各地の神社」のページで、数の多い神社と、その御祭神をこう紹介しています。同じ名前の神社でも、お祀りしている神は神社によって違うことがあります。
- 神明(しんめい)さま: 天照大御神(あまてらすおおみかみ)。伊勢神宮で祀られている天照大御神を各地に祀る神社
- お稲荷さん: 宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)
- 八幡さま: 応神天皇・神功皇后・比売神(ひめがみ)。大分県の宇佐神宮が起源とされる
- 天神さん: 菅原道真公
- 住吉さん: 底筒之男命・中筒之男命・表筒之男命の三柱。神功皇后もお祀りされている神社もある
- お諏訪さま: 建御名方神(たけみなかたのかみ)。お妃の八坂刀売神(やさかとのめのかみ)がお祀りされる場合もある
日本大百科全書は、全国の神社でもっとも数が多いのは稲荷神社なので、その主祭神の宇迦之御魂神が、もっとも多くの神社で祭られている祭神といえよう、と書いています。近くの神社の名前に「神明」「稲荷」「八幡」などがついていたら、この一覧が御祭神の見当をつける手がかりになります。ただ、住吉さんやお諏訪さまのように、一緒にお祀りされている神は神社によって違うので、最後はその神社の由緒で確かめてください。天照大御神については『アマテラスとは』、神々の分け方は『八百万の神』で書いています。
御祭神は後から加わることも、呼び方が変わることもある
神社ができたときから御祭神が一度も変わっていない神社ばかりではありません。後から神が加わったり、神の呼び方が変わったりした神社があります。
合祀で御祭神が増える
後から神が加わる代表的な形が合祀(ごうし)です。デジタル大辞泉は、合祀を「2柱以上の神を一つの神社にまつること。また、ある神社にまつってあった神を、他の神社に移して一緒にまつること」と説明しています。ブリタニカ国際大百科事典は、本殿合祀・境内合祀・飛び地合祀の三つの形があるとし、日本大百科全書は、江戸時代には合祀を寄宮(よせみや)といった、と書いています。
埼玉県の秩父神社は、公式サイトで御祭神を四柱としています。そのうち天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)には「北辰妙見として鎌倉時代に合祀」、秩父宮雍仁親王(ちちぶのみややすひとしんのう)には「昭和28年に合祀」と添えています。同じ神社の御祭神でも、お祀りされ始めた時代がそれぞれ違うことが、由緒書きから読み取れます。
神仏分離で呼び方が変わった
明治のはじめには、神さまの呼び方そのものが改められました。日本大百科全書によると、1868年(慶応4年)の旧暦3月28日、太政官(だじょうかん)は神仏分離令(神仏判然令)を出し、権現(ごんげん)などの仏教の言葉を神号とする神社の調査と、仏像を神体とすることの禁止を全国に布告しました。百科事典マイペディアは、この神仏分離のなかで権現・明神・菩薩などの神号が廃されたと書いています。
秩父神社も、中世以降は妙見信仰と結びついて「秩父妙見宮」として栄えましたが、「明治の神仏判然令により秩父神社の旧社名に復しました」と公式サイトに書いています。古い記録で同じ神社が別の名前で出てくるのは、こうした事情があるからです。神と仏が一緒に祀られていた時代のことは『神仏習合とは』、明治に御祭神の呼び方が整理された例は『八坂神社とは』、合祀の年が分かる例は『神田祭とは』で取り上げています。
自分の行く神社の御祭神を調べる方法
ここからは、自分の行く神社の御祭神を調べる方法です。国立国会図書館の調べ方案内「リサーチ・ナビ」の「神社を調べる」が挙げている資料をもとに、手軽なものから順に4段に並べました。順番と1段目の由緒書きは、この記事で決めた目安です。上から順に当たって、分かったところで止めてかまいません。
- 境内の由緒書き・神社の公式サイト: 由緒を書いた看板や、公式サイトの「御祭神」「由緒」のページを見ます。掲示や公式サイトがある神社なら、いちばん手軽な入口です。書かれているのは多くの場合その神社自身がまとめた説明なので、気になるところは次の段の資料と見比べてください
- 都道府県の神社庁: 神社本庁は、各都道府県に地方機関として神社庁を置いており、「神社庁一覧」のページで連絡先を公開しています。リサーチ・ナビは、各都道府県の神社庁のウェブサイトで検索できる場合があると書いています。たとえば兵庫県神社庁や岡山県神社庁のサイトには、神社を探すページがあります
- 神社のデータベース: 「新全国神社検索」(神社史研究会)は、御祭神や御神徳の言葉でも検索できます。皇學館大学の研究部会と神社史研究会が各県の神社庁の協力を得て作っているものです。サイト自身が、最新データではないものも含むと書いているので、ほかの方法と見比べてください。リサーチ・ナビによると、國學院大學の「神道・神社史料データベース(現代)」は、旧官国幣社以下、府県社以上の約1500社を収録しています
- 図書館の神社名鑑と神社明細帳: 『全国神社名鑒』(1977年)は、その中の「著名神社名鑑」で約6,000社、『全国著名神社名鑑』(2005年)は約2,300社の祭神を調べられます。『延喜式』に載る神社(式内社)なら『特選神名牒』があります。明治以降に政府が作り、国と府県で保管された神社明細帳は、主な項目に祭神が入っています(項目は日本歴史地名大系の埼玉県分の解説による)。文部省が保管していた明細帳は、いまは国文学研究資料館が所蔵しています
4段目まで行くのは大変ですが、地域の小さな神社は、上の段で見つからないこともあります。愛知県の尾張地域でいくつもの神社を受け持つ宮司のサイト「東春神社考」は、由緒というと、その神社がまとめたもの、つまり自己申告であることが多いと書いています。そのうえで、江戸時代の地誌や、それをもとにした郷土誌を調べることをすすめていて、郷土誌であれば地域の図書館にほぼ置いてあるだろう、とも書いています。
図書館で神さまの名前から調べたいときのために、リサーチ・ナビは「祭神名、神徳(御利益)から調べる」として神名の辞典をいくつか挙げています。図書館の辞典とは別に、由緒書きに出てきた神さまを家で確かめられるように、手元に置ける一般向けの本を一冊挙げておきます。
公式サイトの御祭神欄は、名前の横の添え書きまで読む
1段目の公式サイトで御祭神の名前が分かったら、その横に何が書き添えてあるかも見ておくと、どの建物にお祀りされているか、いつ加わったかといった、お祀りのされ方の手がかりになることがあります。4つの神社の公式サイトで御祭神を紹介しているページを見比べたところ、書き方はそれぞれ違っていました(2026年10月14日確認)。
- 出雲大社(島根県出雲市)の「出雲大社と大国主大神」のページは、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)をお祀りする神社とし、御神名の一つとして「所造天下大神(あめのしたつくらししおおかみ)」も挙げています。一柱の神を、いくつかの呼び名とあわせて紹介しています
- 明治神宮(東京都渋谷区)は、「明治天皇と皇后の昭憲皇太后を御祭神としておまつりしています」と書き、明治天皇と昭憲皇太后の二柱を並べています
- 春日大社(奈良県奈良市)は、御本殿の第一殿に武甕槌命(たけみかづちのみこと)、第二殿に経津主命(ふつぬしのみこと)、第三殿に天児屋根命(あめのこやねのみこと)、第四殿に比売神(ひめがみ)と、建物ごとに一柱ずつ示しています
- 秩父神社(埼玉県秩父市)は、四柱それぞれに説明を添え、八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)には「政治・学問・工業・開運の祖神」、天之御中主神には「北辰妙見として鎌倉時代に合祀」と書いています
同じ「御祭神」の欄でも、何柱かという数だけでなく、どの建物にお祀りされているのか、いつ加わったのかまで書いてある神社があります。これは4社の公式サイトの書き方を並べたもので、ほかの神社が同じ形で書いているとは言えません。それでも、名前の横の「第一殿」のような書き方はどの建物にお祀りされているかを、「鎌倉時代に合祀」のように年代の添えられた書き方はいつ加わったかを、自分の行く神社に当てはめて読むときの手がかりになります。
神社の古さや大きさで、当たる資料を選ぶ
この章の初めに挙げた4段は手軽な順に並べた目安で、神社によっては途中を飛ばしたほうが早いこともあります。リサーチ・ナビの説明を読むと、図書館の資料は、どの神社を載せているかの範囲がそれぞれ違うからです。行く神社がどれに当てはまるかで、当たる資料の見当をつけられます。
- 『延喜式』に載る古い神社(式内社)なら、『特選神名牒』で祭神・神階・祭日などを調べられます
- 別表神社とおもな単立神社なら、『神道事典』の「神社一覧」で祭神や例祭日、由緒などを調べられます
- リサーチ・ナビによると、戦前の社格(旧社格)で郷社以上だった神社は『神道大辞典』にすべて載っていて、村社や無格社は特色のあるものだけが載っています
- どの名鑑にも見当たらない小さな神社は、都道府県の神社庁のサイトの検索(ある場合)か、明治以降に政府が作った神社明細帳に当たります。明細帳を見られる場所や方法は保管している機関によって違うので、図書館や文書館で確かめてください
昔の社格は、神社庁の検索結果や由緒書きに書かれていることがあります。次の章で取り上げる兵庫県神社庁の水無月神社のページにも、由緒の欄に「無格社」とありました。旧社格が分かれば、どの資料に載っていそうかの見当がつきます。兵庫県神社庁の検索のように、主祭神と配祀神の欄が分かれている場合は、主祭神の欄だけで終わりにせず、配祀神の欄にも目を通しておくと、一緒にお祀りされている神に気づきやすくなります。
調べても御祭神がわからない神社もある
ここまでの方法で調べても、御祭神が分からない神社はあります。神社庁の神社検索でも、御祭神が「不詳」と表示される神社があります。
兵庫県神社庁の神社検索で、養父市大屋町の水無月神社(みなづきじんじゃ)を開くと、御祭神の欄は「主祭神 不詳」、配祀神の欄は「—」となっていました(2026年10月14日確認)。由緒の欄には「無格社(兵庫県神社誌)」とあり、電話番号の欄には名草神社の番号が載っています。神社コードの欄には「兼務」と添えられていて、ほかの神社の神職が兼ねてお世話をしている神社だとみられます。

祭神が分からないことは、昔からありました。國學院大學の河村忠伸氏の論文「御祭神に関する神社制度」は、「そもそも江戸時代まで『祭神不詳』や祭神につき諸説ある場合、同一祭神であっても表記が統一されていなかった場合が大多数であった」と書いています。明治以降の神社行政は、神社明細帳に載せるために由緒を調べ、祭神の名前や書き方を確定させていきました(同論文)。大正2年(1913年)の内務省令第6号は、祭神の「決定」「変更」「訂正」の手続きを定めていて、この「決定」は、それまで「祭神不詳」などで祭神名が分からなかった神社が、由緒を調べた結果、祭神名を確かめることを指す、とも説明しています。「不詳」は、明治より前の記録でも珍しくなかった書き方だといえます。
「登記簿を見れば分かる」とは限らない
先ほどの知恵袋の質問には、法務局で登記簿を取り寄せれば祭神名が分かり、神社の登記には祭神が必須だ、という趣旨の回答が付いていました。ただ、宗教法人法を確かめると、設立の登記で登記する事項(第52条)は、目的・名称・事務所の所在場所・代表権を持つ人の氏名などで、祭神という項目はありません。規則に書く事項(第12条)にも、祭神の項目はありませんでした。「目的」の欄に御祭神の名前を書いている神社はあるかもしれませんが、登記簿を取ればどの神社でも御祭神が分かる、とは言えません。
分からないときは誰に聞けばよいか
資料で分からないときは、人に聞くのがいちばん確かです。兼務の神社でも、水無月神社のように、ほかの神社の電話番号が載っていれば、そこに問い合わせられることがあります。神社本庁は、地鎮祭の案内の中で、神社に神職が常駐していない場合はお住まいの都道府県の神社庁に相談するよう書いています。地元の神社であれば、お祭りの世話をしている氏子総代の方に聞くのも一つの方法です。
地元の神社を調べて「祭神不詳」と出てくると、何も分からなかったような気持ちになるかもしれません。ただ辞典によると、平安時代の延喜式の神名帳に載っている3132座の神は、古事記や日本書紀の神代の巻に名前が出てくる神を除くと、ほとんどがその土地の神だったそうです。私は、御祭神の名前がわからない神社の中には、その古いお祀りの形を今に残している神社もあるのではないかと考えています。記録が失われて、名前が分からなくなっただけの神社もあるはずです。それでも、名前がわからなくても、その土地の人がお祀りを続けてきたこと自体が、その神社の由緒なのだと思います。
御祭神と御神徳(ご利益)の関係
御祭神を調べると、次に気になるのが御神徳(ごしんとく)、いわゆるご利益だと思います。由緒書きや公式サイトに書かれている御神徳は、その神社が、自分のところの神さまについて伝えている言葉として読むのがよいと私は考えています。
たとえば石鎚神社は、石鎚毘古命について「諸願成就の神様で知られますが、特に家内安全・厄除開運・当病平癒の神として篤い信仰を受けています」と書いています。これは、石鎚神社がその神に寄せられてきた信仰を紹介した文です。
御神徳は、時代とともに広がってきたものでもあります。神社本庁は、お稲荷さんについて「もともとは農業の神さまでしたが、今は広く商業・産業を守護する神さまとされています」と書いています。住吉さんについても、神功皇后の話から海上安全の神さまとして、ほかに漁業や農耕、和歌の神さまとしても広く信仰されている、と紹介しています。
この記事では、どの神さまにお参りすると何が叶う、という書き方はしません。御神徳は、神社が伝えてきた信仰の内容として受け止め、お参りする神社を選ぶときの手がかりの一つにしてください。
よくある質問
- 御祭神が同じ、別の神社にお参りしてもよいですか?
各地の神社に同じ神さまがお祀りされていることには、分霊(ある神社の祭神の霊を分けて他に祭ること)や勧請(分霊を他の地に移して祭ること)という仕組みが関わっています(言葉の意味はデジタル大辞泉)。たとえば神社本庁は、神明さまを、伊勢神宮で祀られている天照大御神を各地に祀る神社と説明しています。どちらの神社にお参りするべきかを決めた文は、この記事のために読んだ資料にはありませんでした。気になる場合は、お参りする神社に尋ねてみてください。
- 天照大御神より上の神さまはいるのですか?
古事記の冒頭には、天地のはじめに高天原(たかまがはら)に現れた神として、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)をはじめとする五柱の神が出てきます。古事記はこの五柱を「別天神(ことあまつかみ)」と呼んでいます(精選版日本国語大辞典)。日本大百科全書は、天之御中主神を古事記の神々のなかで最初に現れた神としています。この記事では、神々の順位は決めません。神々の分け方や序列の考え方は『八百万の神』の記事で書いています。
- お参りのとき、御祭神の名前を唱えるのですか?
参拝のときに御祭神の名前を唱えなければならない、と決めた文は、この記事のために読んだ資料(デジタル大辞泉や精選版日本国語大辞典などの辞典、神社本庁と岡山県神社庁の資料)にはありませんでした。神社ごとに参拝の案内がある場合は、それに従ってください。御祭神の名前を知っておくと、由緒書きや御神徳の案内が読みやすくなります。お参りのときの心の持ち方や祈り方は、『神様への祈り方とは』の記事で書いています。
神々の分け方は『八百万の神』、お参りのときの祈り方は『神様への祈り方とは』にまとめています。
まとめ
この記事で確かめたことを、要点だけ並べておきます。
- 御祭神は、その神社にお祀りされている神のこと(デジタル大辞泉「祭神」)
- 主祭神は祭神の中で中心となる神。配祀神は主祭神のほかにお祀りされる神、相殿神は主祭神と同じ社殿に合わせてお祀りされる神で、同じ神が両方で呼ばれることもある
- 御神体は、神霊が宿るとされる物。御祭神(神そのもの)とは、辞典では分けて説明されることが多い
- 御祭神が神社ごとに違うのは、土地の神、人、各地に分けて迎えた神と、祀られ始めた事情が違うから
- 合祀で御祭神が後から加わったり、明治の神仏分離で神の呼び方が変わったりした神社がある
- 調べるときは、この記事の目安として、由緒書き、神社庁(サイトに検索がある場合)、神社のデータベース、図書館の神社名鑑の順に当たる。神社庁の神社検索でも「不詳」と出る神社がある
- 御神徳は、その神社が伝えてきた信仰の言葉として読む
由緒書きの御祭神の欄には、主祭神の名前のほかにも、神の名前や「合祀」「相殿」といった添え書きが並んでいることがあります。次に神社へ行ったときは、その欄を最後の行まで読んでみてください。いつ、どの神さまが加わったのかが分かると、いつもお参りしている神社の歴史が、少し身近になると思います。あなたの近くの神社には、どんな神さまが並んでいるでしょうか。
参考文献
公式資料(神社本庁・神社庁・神社・公的機関)
- 神社本庁「各地の神社」(地域の守り神・数の多い神社と御祭神・稲荷と住吉の御神徳)
- 神社本庁「神社庁一覧」(各都道府県の神社庁と連絡先)
- 神社本庁 公式サイト(神職が常駐していない場合は神社庁に相談する、という地鎮祭の案内)
- 岡山県神社庁「神道用語辞典」(祭神・主祭神・相殿・神体・神体山・内陣)
- 兵庫県神社庁 神社検索「水無月神社」(主祭神「不詳」の表示・兼務)
- 石鎚神社「御祭神と御神徳」(御祭神は一柱・三体の御神像・御神徳)
- 秩父神社「ご祭神・由緒」(四柱の御祭神と合祀の時代・神仏判然令と社名)
- 廣田神社「御祭神と御創祀」(御祭神と御脇殿・廣田五社)
- 大神神社「大神神社について」・「拝殿」(御祭神 大物主大神・三輪山を御神体とし本殿が無い・三ツ鳥居)
- 出雲大社「出雲大社と大国主大神」(大国主大神・御神名の一つ所造天下大神)
- 明治神宮「明治神宮について」(明治天皇と昭憲皇太后を御祭神とする)
- 春日大社「御本殿」(第一殿から第四殿の御祭神)
- 国立国会図書館 リサーチ・ナビ「神社を調べる」(神社名鑑・神社明細帳・データベース・神名の辞典)
- e-Gov 法令検索「宗教法人法」(第12条 規則の記載事項・第52条 設立の登記事項)
- 新全国神社検索(神社史研究会)(御祭神・御神徳での検索・データの出どころ)
辞典・論文
- 「祭神」デジタル大辞泉・精選版日本国語大辞典・百科事典マイペディア・日本大百科全書(kotobank 掲載)(祭神の意味・延喜式の用例・地神・人格神・主祭神・稲荷)
- 「主神」デジタル大辞泉ほか(kotobank 掲載)
- 「配祀」デジタル大辞泉・精選版日本国語大辞典(kotobank 掲載)
- 「相殿」デジタル大辞泉・日本大百科全書ほか(kotobank 掲載)(配祀神と相殿神・延喜式神名帳の「前」)
- 「神体」デジタル大辞泉ほか(kotobank 掲載)・「御神体」(kotobank 掲載)
- 「神名帳」デジタル大辞泉ほか(kotobank 掲載)(延喜式の3132座・2861社)
- 「摂社」デジタル大辞泉ほか(kotobank 掲載)
- 「人神」世界大百科事典ほか(kotobank 掲載)(菅原道真)
- 「分霊」(kotobank 掲載)・「勧請」デジタル大辞泉・世界大百科事典ほか(kotobank 掲載)(八幡宮の勧請の例)
- 「合祀」デジタル大辞泉・日本大百科全書・ブリタニカ国際大百科事典(kotobank 掲載)
- 「神仏分離」日本大百科全書・百科事典マイペディアほか(kotobank 掲載)
- 「神社明細帳」日本歴史地名大系(kotobank 掲載)
- 「別天神」精選版日本国語大辞典ほか(kotobank 掲載)・「天之御中主神」日本大百科全書(kotobank 掲載)
- 河村忠伸「御祭神に関する神社制度 : 別格官幣社配祀神 殉難戦没之将士を例として」(國學院大學 研究開発推進センター研究紀要 第10号)(江戸時代までの「祭神不詳」・大正2年内務省令第6号の祭神の決定)
補助参考(神職のサイト・読者の疑問)
- 東春神社考「神社の由緒の調べ方(幕末以前編)」(由緒は自己申告であることが多い・地誌と郷土誌)
- Google 検索の「他の人はこちらも質問」・関連検索と、Yahoo!知恵袋に寄せられた御祭神の質問(読者の疑問の把握に用いた)
- Wikipedia「祭神」(確認の入口として、本文根拠としては用いない)
本記事は、2026年10月に、神社本庁と岡山県・兵庫県の神社庁、石鎚神社・秩父神社・廣田神社・大神神社・出雲大社・明治神宮・春日大社の公式サイト、国立国会図書館のリサーチ・ナビ、e-Gov の宗教法人法の条文を確かめ、コトバンクで読める辞典類と國學院大學の論文で言葉の意味と経緯を照らし合わせて、御祭神の意味と調べ方を本記事独自に整理しました。御祭神や由緒の書き方は神社によって違うことがあるため、くわしくはお参りする神社や都道府県の神社庁にご確認ください。
※本記事の御利益・御神徳に関する記述は、各神社が伝える信仰の紹介です。詳細は免責事項をご確認ください。
