MENU

神職の階位とは|権正階や明階の違いと宮司になれる資格の線

朝の光が差す鎮守の森の中に、低い石段と朱の小さな鳥居が1基、その奥に素木の小さな社殿が1つ建つ里の神社のイメージ画像。左上に「神職の階位とは」の横書きタイトル。ふだん神職の姿が見えない小さな神社にも資格を持つ宮司がいることを表した、神職の階位を解説する記事のアイキャッチ画像。

神社で紫の袴をはいた神職を見かけると、この人が一番上の立場なのかなと思いませんか。袴の色で神職の位が分かる、と説明している記事もあります。ところが、金沢の大野湊神社(おおのみなとじんじゃ)のブログには、同社の禰宜(ねぎ)が「宮司=紫袴 とは限りません」と書いています。

調べてみると、神職の「位」には階位・身分・職階の3種類があり、袴の色が表しているのはこのうちの身分でした。権正階(ごんせいかい)や明階(めいかい)は階位の名前で、宮司や禰宜は職階の名前です。3つは別々に決まるので、どれか1つを見ただけでは「誰が上か」は分かりません。

この記事では、3つの違いから始めて、権正階で何ができるのか、神主と宮司の違い、袴の色の見方、階位の取り方、そして階位の名前の由来までを順に見ていきます。

この記事のポイント
  • 神社本庁に属する神社の神職では、上下を表すものが階位・身分・職階の3つあります。それぞれ別の基準で決まります
  • 階位は神社本庁が認める資格で、上から浄階・明階・正階・権正階・直階の5段階です
  • 権正階があれば、一般の神社の宮司になれます。別表神社の宮司になるには明階以上が必要です
  • 神主は神職全体を指す言葉で、宮司はその神社の長という役職の名前です
  • 袴の色が示しているのは身分です。階位や役職は袴の色からは分かりません
  • 階位の講習会は、神社の後継者で急いで資格が必要な人に受講が許されるのが原則です
  • 階位の名前は天武天皇の冠位から取られたとされますが、明と浄の順番が入れ替わっています
目次

神職の「位」には階位・身分・職階の3種類がある

低い丘から見下ろした朝の里の風景のイメージ画像。稲の実った田と細い川のあいだに、こんもりした鎮守の森が3つ点在し、それぞれの森の端に小さな朱の鳥居が1基ずつ見える。3つの森は細い農道でつながっている。1人の宮司が里の神社をいくつも受け持つことを表した画像。

先に結論を書きます。神社本庁に属する神社の神職では、上下を表すものが階位・身分・職階の3つあり、それぞれ別の基準で決まります。

神職の装束を研究している綺陽装束研究所は、この3つをこう説明しています。

神職には上下のランク付けが3つあります。それは学識の指標である「階位」、経験功績を反映した「身分」、そして神社内の役職である「職称」です。

綺陽装束研究所「神職と神社 まめ知識」

ここで「職称」と書かれているものを、東京都神社庁の案内では「職階(しょっかい)」と呼んでいます。この記事でも職階と書きます。3つをまとめると次のとおりです。

神職の3つの物差し
  • 階位(かいい)…神職になるための資格。神社本庁が認める5段階
  • 身分(みぶん)…経歴や功績で決まる6つの等級。袴の色に表れる
  • 職階(しょっかい)…その神社の中での役職。宮司・禰宜・権禰宜など

別々に決まるということは、3つがずれる場面があるということです。大野湊神社のブログには、「本務神社では禰宜、兼務神社では宮司と神社によって職階の違う神職も大勢おります」と書かれています。同じ人が、ふだん勤める神社では禰宜、受け持っているほかの神社では宮司になる。職階は人に付くものではなく、神社ごとに決まる役職だからです。

階位のほうも同じです。あとで見るように、一般の神社では権正階を持っていれば宮司になれます。決まりの上では、明階を持つ禰宜が、権正階の宮司のもとで奉仕することもありえます。資格は禰宜のほうが上でも、その神社の長は宮司です。

「神職の中で誰がいちばん偉いのか」が気になったら、まずどの物差しで聞いているのかを分けてみてください。それだけで答えがかなり出しやすくなります。ここからは、階位から順に中身を見ていきます。

階位は神社本庁が認める資格で5段階ある

階位は、神社本庁に属する神社で神職として奉仕するために必要な資格です。京都の神職養成機関である京都國學院(きょうとこくがくいん)は、次のように案内しています。

神職になるための資格を「階位(かいい)」と言います。階位には五段階あり、上から浄階(じょうかい)、明階(めいかい)、正階(せいかい)、権正階(ごんせいかい)、直階(ちょっかい)となっています。

京都國學院「階位について」

意外だったのは、階位を出すのが大学ではないことです。國學院大學の神職課程の案内には、「『階位』は本学が授与するものではなく、神社本庁が各都道府県神社庁を通じて授与するものです」と書かれています。大学や養成所は学ぶ場所で、階位を認めるのは神社本庁という分担です。

5つの階位を上から並べると、おおまかな位置づけは次のようになります。

  • 浄階(じょうかい)…いちばん上の階位。長く奉仕して功績のあった神職に与えられる
  • 明階(めいかい)…大きな神社(別表神社)の宮司になるのに必要な階位
  • 正階(せいかい)…別表神社の禰宜になるのに必要な階位
  • 権正階(ごんせいかい)…一般の神社の宮司になれる階位
  • 直階(ちょっかい)…いちばん基本の階位。一般の神社の禰宜・権禰宜になれる

浄階だけは取り方が違います。京都國學院は、浄階について「現に神職である者に対し、その在職年数、功績等を勘案して与えられますので、通常の方法では取得できません」と書いています。学んで取れる階位は明階までということです。

今の階位の制度は、戦後に神社本庁ができてから整えられたもので、はじめから5段階だったわけではありません。神奈川県の比々多神社(ひびたじんじゃ)のブログによると、皇典講究所(こうてんこうきゅうしょ。神職の資格を出していた団体で、神社本庁のもとになった三つの団体の一つ)の資格を改めて、まず「浄階・明階・正階・直階」の4つに分け、その後「権正階」が加わって今の5つになったとされています。権正階が加わった年は、今回調べた資料には書かれていませんでした。

「神社本庁」は国の役所ではない

「神社本庁」という名前から、文化庁や気象庁のような国の役所を思い浮かべるかもしれません。そうなると、階位も国家資格なのかと考えたくなります。けれども、神社本庁は国の機関ではなく、宗教法人です。

神社本庁ができたいきさつは、公益財団法人日本宗教連盟の紹介に書かれています。昭和20年(1945年)12月15日に「神道指令」が出され、神社を国から切り離すよう命じられました。そこで、当時民間の団体だった皇典講究所・大日本神祇会・神宮奉斎会の3つが集まり、昭和21年(1946年)2月3日に神社本庁を設けました。上で紹介した皇典講究所は、この3つの団体の一つです。

文化庁の説明では、宗教法人とは、宗教団体が都道府県知事か文部科学大臣の認証を受けて法人格(法律の上で一つの人として扱われる資格)を持ったものです。ほかの都道府県にある宗教法人をまとめる宗教法人は、文部科学大臣が所轄庁(担当する役所)になります。日本宗教連盟によると、神社本庁は全国約8万社の神社を包括する(傘下にまとめる)団体です。文化庁の説明に当てはめると、神社本庁は文部科学大臣が所轄する宗教法人にあたります。なお、神社本庁に入っていない神社(単立神社)もあります。階位は、国ではなく宗教法人である神社本庁が認める資格です。

ただし、国家資格ではないからといって、手軽に取れるわけではありません。このあと見るように、養成機関で課程を終え、神社での実習を済ませ、神社庁を通して2度の願いを出してから、ようやく階位証が届きます。

権正階は一般の神社で宮司になれる階位

権正階について調べている方がいちばん知りたいのは、この資格で何ができるのかだと思います。答えは、権正階を持っていれば、一般の神社の宮司になれるです。

京都國學院は、神社本庁の「階位取得のてびき」から抜き出した内容として、次のように書いています。

基本的には階位を持っていれば禰宜、権禰宜として任用され、権正階以上の階位を持っていれば宮司になれます。別表神社においては、「宮司」「権宮司」は明階以上、「禰宜」は正階以上、「権禰宜」は権正階以上とされています。

京都國學院「神職と階位」(神社本庁「階位取得のてびき」より抜粋)

ここに出てくる別表神社(べっぴょうじんじゃ)は、神社本庁の規程の「別表」に名前が載っている神社のことです。昭和23年(1948年)に定められた「役職員進退に関する規程」の別表がもとになっていて、熱田神宮や明治神宮のような規模の大きな神社が入っています。昭和28年(1953年)の通達では、別表に載せるのは事務の取り扱い上の区別で、社格のような格付けの意味はないとされています。

一般の神社と別表神社では就ける職が違う

階位ごとに、一般の神社と別表神社でどの職に就けるかを表にしました。

階位一般の神社で就ける職別表神社で就ける職
浄階・明階宮司・禰宜・権禰宜宮司・権宮司・禰宜・権禰宜
正階宮司・禰宜・権禰宜禰宜・権禰宜
権正階宮司・禰宜・権禰宜権禰宜
直階禰宜・権禰宜神職として就ける職はない(権禰宜にも権正階以上が要る)

権宮司を一般の神社の列に入れていないのは、京都國學院の案内で、権宮司は別表神社のうち承認を受けた神社にだけ置けるとされているからです。表を見ると、権正階は、一般の神社なら宮司になれて、別表神社では権禰宜にあたる位置にあります。同じ資格でも、神社の種類によって就ける職が変わります。

権正階か正階かで資料の書き方が分かれている

ただ、この線については資料によって書き方が違います。生姜神社(はじかみじんじゃ)の神職のブログ(2010年)や、寺社の用語集サイトには、正階を「一般の神社の宮司に必要な階位」と書いたものがあります。ただ、生姜神社のブログは同じページの権正階の説明で、この階位以上でないと一般の神社の宮司にはなれない、とも書いていて、ページの中でも書き方がそろっていません。いっぽうで、神社本庁のてびきからの抜粋と明記した京都國學院の案内と、別表神社の任用の決まりを紹介した資料は、どちらも権正階以上としています。この記事では、出どころがはっきりしている後者に合わせました。ご自分のことで確かめたい場合は、各都道府県の神社庁に問い合わせるのが確実です。

宮司がいくつもの神社を受け持つ理由

権正階という線が実際に重い意味を持つのは、1人の宮司がいくつもの神社を受け持っていることが多いからです。大野湊神社のブログは、村の鎮守さまと呼ばれるような神社にはふだん神職がいないことが多いものの、無人に見える神社にも宮司はいると書いています。そのうえで「実は全国の多くの宮司は一社だけではなく、複数神社の宮司を兼務しております」と説明しています。同じブログによると、大野湊神社の宮司は、書かれた2013年の時点で29社の宮司を兼ねていました。同じブログは、神社本庁の包括下にある神社について、宮司と神職のおおよその人数も挙げています。次の人数は、その概数です。

全国の神職は約2万人、そのうち宮司は約1万人といわれています。神社本庁に属する神社は約8万社ですから、計算の上では1人の宮司がいくつもの神社を受け持っていることになります。私は、町の小さな神社を支えているのは、権正階を持つ宮司の方々ではないかと考えています。ふだん神職の姿を見かけない神社にも、お祭りの日には資格を持った宮司が来て祝詞をあげている。権正階という名前を調べる意味は、そこにあると思います。

神主と宮司の違いは職階でわかる

神主さんと宮司さんは、同じ人のことではないのでしょうか。

違います。神主は神職全体を指す言葉で、宮司はその神社の長という役職の名前です。東京都神社庁の神社Q&Aは、こう説明しています。

「神職」とは、神さまに奉仕し祭儀や社務などを行う者の総称です。「神官(しんかん)」とか「神主(かんぬし)」ともいわれています。

東京都神社庁「神社Q&A 神社の祭り(8)」

同じページによると、神主という言葉には、昔はお祭りをつかさどる祭主や、神社で祭りを執り行う司祭者という意味があったようですが、今は神職とまったく同じ意味で使われています。いっぽう宮司は役職の名前です。神社本庁が定めた「神社本庁憲章」の第十二条は、宮司を「一社の長」としたうえで、その務めを「祭祀に管掌し、社務をつかさどり」、「神社の信仰と伝統の護持に努める」ことと定めています。この条文は大野湊神社のブログでも紹介されていますが、ブログでは「祭祀を管掌し」と、助詞が一文字違う形で引かれています。

大野湊神社のこのブログは、宮司を会社の社長にたとえて、神社の規模が大きくても小さくても宮司は1社に1人だと書いています。神社本庁に属する神社の職階を、京都國學院の案内をもとに上から並べると次のようになります。

  • 宮司(ぐうじ)…神社の長。1社に1人
  • 権宮司(ごんぐうじ)…宮司の次の職。別表神社のうち承認を受けた神社にだけ置ける
  • 禰宜(ねぎ)…宮司を助ける職。定員は1人とされる
  • 権禰宜(ごんねぎ)…禰宜の次の職。定員は若干名とされる
  • 出仕(しゅっし)…見習いの期間の呼び名。置いている神社もあるが、正式な神職とはみなされない

定員は神社の規則で増やしているところもある、と京都國學院は補足しています。伊勢神宮だけは別の並びで、東京都神社庁によると祭主(さいしゅ)・大宮司(だいぐうじ)・少宮司(しょうぐうじ)・禰宜・権禰宜・宮掌となっています。

権禰宜や権正階の「権」は、正式な職の次を表す字

権禰宜、権宮司、権正階と、「権」の付く名前がいくつも出てきます。大野湊神社の禰宜も、名刺を渡すたびに「この肩書きは何と読むのですか?」と聞かれてきたそうです。読みは「ごん」です。

辞書を引くと、「権」の付く官職は権官(ごんかん)と呼ばれ、「律令制で、定める正官以外に仮に任じる官」と説明されています(デジタル大辞泉)。例として挙がっているのは権大納言などです。神職の「権」も同じ字で、権禰宜は禰宜の次、権宮司は宮司の次、権正階は正階の次に置かれています。神職の呼び名がこの官職の言い方から来たことを直接書いた資料は今回見つけられませんでしたが、「正式な職のすぐ下」と覚えておけば、名刺の肩書きも読みやすくなります。

袴の色が示すのは階位ではなく身分

明るい素木の床に、神職の袴が3つ、畳まれて横一列に並ぶ静物のイメージ画像。左は白地に白い紋が浮かぶ袴、中央は紫の無地の袴、右は浅葱色(薄い青緑)の無地の袴。袴の色と紋が、特級・二級・三級と四級という神職の身分の等級ごとに決まっていることを表した画像。
境内で見かける疑問

紫の袴の神職は、階位が高い人なのでしょうか。それとも、その神社の宮司なのでしょうか。

答えはどちらでもありません。袴の色で分かるのは身分で、階位でも職階でもありません。

比々多神社のブログは「身分の表示は、大祭に身に付ける正服である『袍』(ほう)や普段身に付ける『袴』(はかま)の色目の違いで表されています」と書いています。大野湊神社のブログも「袴の色と職階はリンクしておりませんので、外見から判断することは出来ません」と、はっきり書いています。

身分は、神社本庁の「神職身分に関する規程」で決められている等級です。上から特級・一級・二級上・二級・三級・四級の6つがあります。綺陽装束研究所によると、経歴や人柄、神社への功績をもとに、神社本庁の身分選考委員会で決められます。袴の色と紋は、この等級ごとに決まっています。ただし、三級と四級は同じ袴です。

特級から三級・四級までの袴の色と紋は、生姜神社の神職のブログに写真で載っています。下の表では、ブログにある「八藤丸文紫緯白」のような紋の名前をかみくだいて書き、最後の見習いの行だけは綺陽装束研究所の説明から足しました。まとめると次のとおりです。

特級
白地に白い紋
一級
紫地に白い紋
二級上
紫地に薄紫の紋
二級
紫の無地
三級・四級
浅葱(あさぎ。薄い青緑)の無地
出仕などの見習い
白の無地が多い。6つの等級とは別で、明確な決まりはないとされる

最後の行だけは、身分の等級ではありません。綺陽装束研究所は、出仕などは本来の神職ではないので袴の決まりがなく、白い袴をはくことが多いと書いています。

宮崎県高千穂町にある二上神社(ふたがみじんじゃ)の宮司は、ブログで「白に始まり白に終わるのです」と書いています。なりたての神職の白い袴と特級の白い袴は、遠くからだと見分けにくいそうです。近くで見ると、特級の袴には白い紋が入っています。

では身分と階位はまったく関係がないのかというと、そうでもありません。綺陽装束研究所の解説によると、権正階以上の階位で初めて神社に勤めると、まず三級の身分から始まります。特級・一級には原則として浄階、二級上・二級には正階以上が必要ともされています。つまり、明階を持っている神職でも、勤めはじめは三級の身分です。上の対応に当てはめると、勤めはじめの袴は浅葱です。二上神社の宮司は「神職になりたては白色」と書いていますが、出仕や見習いという言葉は使っていません。白い袴は、表の最後の行のとおり、出仕のような正式な神職になる前の人がはくことが多いものなので、「なりたて」に見習いの時期まで含めているのかもしれません。神社や地域による呼び方の違いもありえるので、ここは私の読みとして書いておきます。袴の色は、階位の高さよりも、神職になってからの経歴や功績に合わせて変わっていきます。

同じ研究所は、平成16年(2004年)3月時点の身分の内訳も載せています。神社本庁に属する神社の神職21,542人のうち、三級・四級が14,563人でした。上の対応で紫の袴にあたる一級・二級上・二級は、合わせて6,888人で、全体の3人に1人ほどだった計算になります。白地に白い紋の特級は91人で、二上神社の宮司も2026年のブログで特級を「全国に100人くらい」と書いています。

境内で見るときに気をつけたいことが、もう一つあります。お祭りの種類によっては、身分に関係なく全員が白い装束を着ます。生姜神社の神職のブログによると、祭りの重さによる区分で中祭(ちゅうさい)にあたるお祭りでは、斎服(さいふく)という紋のない白い袍と白い袴を着ます。白い装束の神職が並んでいても、それだけで身分は読み取れません。大祭・中祭・小祭というお祭りの分け方は『神社の祭りと神事とは』で扱っています。

神職の一番上は何で測るかで答えが変わる

「神職の最高位は何ですか」と聞かれたら、どの物差しで測るかによって、答えは3つに分かれます。

  • 階位で測るなら浄階。長く奉仕して功績のあった神職に与えられ、学んで取ることはできない
  • 身分で測るなら特級。神社本庁の統理(とうり。神社本庁の代表)や、伊勢神宮の大宮司が特級とされる
  • 職階で測るなら宮司。ただし伊勢神宮の職階では、大宮司の上に祭主が置かれている

3つの答えは、同じ人に重なることもあれば、ばらばらのこともあります。1つの神社の中で誰がいちばん上かを知りたいなら、答えは職階の宮司です。

階位を取る4つの道と授与までの流れ

この記事では、階位を取る道を、学ぶ場所の種類で4つに分けてみます。どの道を通っても、最後に階位を授けるのは神社本庁です。

  • 大学…國學院大學と皇學館大学に神職課程があります。國學院大學の神職課程を終えて卒業するときに授けられるのは正階(明階検定合格)で、明階は神社などに2年以上勤めて研修を受けてからです
  • 神職養成所…京都國學院のような養成機関です。京都國學院の沿革によると、平成14年(2002年)の神社本庁の規程改正で、同院の普通課程は1年で権正階、2年で正階を授ける2種類になりました
  • 通信教育…大阪國學院の通信課程は満25歳以上65歳以下が対象で、1年次に直階、2年次に権正階を取れます
  • 講習会と検定試験…短い期間で取れる講習会と、神社本庁の検定試験です。受ける条件が違う2つの道を、ここではまとめています

このうち講習会は、誰でも受けられるわけではありません。皇學館大学は、階位検定講習会について「神社本庁包括下の神職の後継者(祀職・家職を継承するために緊急に資格を必要とする者に受講許可することを原則としています)」と案内しています。夏休みと春休みの時期に年2回開かれ、受けるには勤める予定の神社の宮司と、その神社がある都道府県の神社庁長の推薦が要ります。家の神社を急に継ぐことになった人のための道なので、教養のために受けてみたいという理由では、原則として受けられません。

どの道でも、課程を終えたらすぐに階位がもらえるわけではありません。京都國學院の案内をもとに、授与までの流れを並べます。

STEP
STEP 01

大学・養成所・通信教育・講習会の課程を終えるか、検定試験に合格します。

STEP
STEP 02

神社庁を通して、神社本庁に「階位検定願」を出します。

STEP
STEP 03

必要な神務実習(神社での実習)を終えます。

STEP
STEP 04

もう一度神社庁を通して「階位授与願」を出し、神社本庁から「階位証」を受け取ります。

検定に合格することと、階位を授けられることは、別の手続きです。大阪國學院の案内でも、2年次を終えると権正階の検定合格が認められ、「さらに、指定神社実習を済ませておれば、神社本庁より権正階の階位証が授与されます」と書かれています。権正階を調べると出てくる「指定神社実習」は、この授与の前に神社で行う実習のことです。大阪國學院は、この実習を2年次を終えたあとに行うこともできるとしています。

階位の名前は天武天皇の冠位から取られたとされる

浄・明・正・直という階位の名前には、出どころの説明が2つあります。

生姜神社の神職のブログと綺陽装束研究所は、天武天皇が定めた「明・浄・正・直・勤・務・追・進」の位の名前を使ったものだと書いています。そして同時に、神道が大切にしてきた「浄く明るく正しく直き心」を表した呼び名だとも書いています。この「浄明正直(じょうみょうせいちょく)」という心構えについては『神様への祈り方とは』で扱っています。

天武天皇の冠位というのは、天武天皇14年(685年)に定められた冠位四十八階(かんいしじゅうはっかい)のことで、『日本書紀』に記事があるとされます。このとき、諸王(しょおう。親王と王をまとめた呼び名)向けの位として明と浄が、臣下向けの位として正・直・勤・務・追・進が定められました。明と浄は臣下とは別の枠で、臣下の位より上に置かれていました。ただ、明の位を実際に授けた例はないとされていて、同じ日の記事では草壁皇子(くさかべのみこ)に浄広壱(じょうこういち)の位が授けられたと伝えられています。位の並びの上では明が上でも、実際に授けられた位で見れば、いちばん上は浄だったことになります。

天武天皇の冠位では「明」がいちばん上で、「浄」はその次でした。神職の階位では、これが入れ替わって浄階がいちばん上に置かれています。入れ替えた理由を書いた資料は、確かめた範囲では見つかりませんでした。私は、神道が大切にしてきた「きよい」という考え方をいちばん上に置きたかったからではないかと考えています。お祭りがまず祓えから始まることを思い浮かべると、そう考えるのが自然な気がします。

よくある質問

巫女さんにも階位や位はあるのですか?

巫女は神職ではないので、階位は必要ありません。綺陽装束研究所は「巫女は神職ではなく資格も不要です」と書いています。東京都神社庁によると、巫女の装束はふつう白衣に緋袴(ひばかま。赤い袴)です。この赤い袴は神職の身分を表す色ではないので、袴の色で神職の身分を見るときは、巫女を分けて考えてください。呼び方や扱いも神社によって違います。綺陽装束研究所は、伊勢神宮では巫女を舞女(ぶじょ・まいひめ)と呼ぶ例を挙げています。

女性も神職になれますか?

なれます。東京都神社庁は「戦前の制度では、神職は男性に限られていましたが、戦後は男女の差別はなくなり、女性も資格を得れば神職になれるようになりました」と説明しています。綺陽装束研究所によると、平成16年(2004年)3月の時点で、神社本庁に属する神社には21,542人の神職がいて、そのうち女性は2,595人でした。なお、養成機関の中には男性だけを募集しているところもあるので、学ぶ先を選ぶときは募集要項を確認してください。

神社本庁に入っていない神社でも、階位の決まりは同じですか?

階位は神社本庁が認める資格なので、神社本庁に属していない神社(単立神社)は、もともとこの決まりの外にあります。ただ、どの神社が単立なのかは決まった顔ぶれではなく、神社本庁を離れた年や戻った年は神社ごとに違います。確かめられた例を年の順に並べると、次のとおりです。

  • 昭和21年(1946年)…伏見稲荷大社と靖国神社が、宗教法人になったときから神社本庁に入らず、単立の宗教法人になる
  • 昭和60年(1985年)…戦後は別表神社だった日光東照宮が、神社本庁を離れて単立になる(1986年とする資料もある)
  • 平成16年(2004年)…明治神宮が神社本庁との関係を解消し、単立になる
  • 平成22年(2010年)…明治神宮が神社本庁との関係を結び直し、同じ年の10月に東京都の認可を受ける
  • 令和6年(2024年)6月…鶴岡八幡宮・荏柄天神社・白旗神社の3社が神社本庁との関係を解消したと報じられる

本文で別表神社の例に挙げた明治神宮も、一度は神社本庁を離れていました。神社の大きさや名前の知られ方からは、神社本庁に入っているかどうかは分かりません。なお、単立の神社は神職の資格を自分で決められるはずですが、ウィキペディアの「神職」の項には、実際には神社本庁の養成機関で学ばせて階位を取らせていることが多い、と書かれています。これを裏づける統計は今回見つけられませんでした。気になる神社があれば、その神社の案内で確かめてみてください。

まとめ

この記事では、神職の階位・身分・職階の違いから、権正階で就ける職、袴の色の見方、階位の取り方と名前の由来までを確かめました。

  • 神社本庁に属する神社の神職では、上下を表すものが階位・身分・職階の3つあり、それぞれ別の基準で決まる
  • 階位は神社本庁が認める資格で、上から浄階・明階・正階・権正階・直階の5段階。浄階は学んで取ることはできない
  • 権正階があれば一般の神社の宮司になれる。別表神社では宮司・権宮司に明階以上、禰宜に正階以上、権禰宜に権正階以上が要る
  • 神主は神職全体を指す言葉で、宮司はその神社の長。職階は神社ごとに決まるので、同じ人が神社によって禰宜にも宮司にもなる
  • 袴の色が示すのは身分。浅葱から紫、紫に紋、白に白紋へと変わり、階位や職階は袴からは分からない
  • 階位は大学・養成所・通信教育・講習会などで取る。講習会は神社の後継者向けが原則で、検定合格のあと実習を経て階位証が授けられる
  • 階位の名前は天武天皇の冠位から取られたとされるが、冠位で上だった明と次の浄の順番が入れ替わっている

次に神社で神職の姿を見かけたら、袴の色を見てみてください。袴で分かるのはその人の身分までで、階位や役職は袴からは読み取れません。お祭りの日に祝詞をあげている宮司さんが、ふだんはどの神社に勤めているのか。そこまで気にしてみると、近所の神社の見え方が少し変わるはずです。

参考文献

公式資料(神社庁・神職養成機関・神社)

補助参考(解説サイト・神職の個人ブログ・辞書・百科事典)

本記事は、2026年9月に文化庁と日本宗教連盟の公開資料、東京都神社庁・京都國學院・國學院大學・皇學館大学・大阪國學院の案内と、大野湊神社・比々多神社・二上神社の公式ブログ、解説サイト・報道と辞書・百科事典を確認し、神職の階位・身分・職階の関係を本記事独自に整理したものです。階位の取り方や講習会の条件、養成機関の募集内容は年度によって変わることがあります。神職を目指す方は、各養成機関と都道府県の神社庁の最新の案内をご確認ください。

※ 本記事の画像はChatGPT 等の生成AIによる象徴的なイメージ画像です。実際の景観とは異なる場合があります。詳細は免責事項をご覧ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

あやとき編集部は、40代の編集メンバーで運営しています。子を持つ親としても、一人の人間としても、暮らしに息づく神社との関わりを大切にしながら、全国の神社文化を丁寧に読み解いていきます。

神道や神社の奥深さを、専門用語に頼らず、どなたにも分かりやすい言葉でお届けします。読者の方と同じ目線で、共に学んでいく姿勢を基本としています。詳しくは運営者情報をご覧ください。

目次